この特例を適用すると、相続した実家の土地の相続税評価額は5000万円からいきなり8割引きの1000万円に下がり、家と預金を合わせても相続額は2000万円に圧縮される。
相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×相続人の数」で計算され、1人息子のAさんは3600万円まで控除されるから、相続額2000万円なら「相続税ゼロ」という計算になった。
「よかった。相続税を払わなくていい」
Aさんは安心し、自分は課税対象者ではなく、申告の義務もないと思い込んだ。それが大きな誤りだった。元国税調査官の税理士・武田秀和氏がいう。
「相続税の減免措置を受けるには、税務署に相続税の申告をして小規模宅地の特例の適用を受け、“相続税ゼロ”という申告結果を受けなければならない。つまり相続税がかかる人と同じように“申告の作業”が伴う。実は本人が勝手に計算して相続税の支払いがないと考え、申告をしないという、ケアレスミスがかなり多い。
無申告だと特例の適用を受けられず、相続税が発生してしまい、さらに税務調査員の調査が入る可能性がある」
Aさんが無申告で特例の適用が認められなければ相続額は当初の6000万円で計算され、基礎控除を差し引いた2400万円に課税、310万円を納付しなければならない。税額ゼロのはずが、大出費である。
※週刊ポスト2018年7月6日号