ホテル以上に被害が大きくなるのは、宿泊に食事が付くケースが多い旅館だ。
「海外からの団体客用に食材を仕入れておいたのに、ドタキャンされて大損害を被ったことも少なくない。でも、インターネットの予約サイトは宿泊施設に対して何の保証もしてくれません」(栃木県の温泉旅館)
この原因は海外の旅行代理店にあるようだ。
「大量に予約を入れ、外国人観光客に売りさばいてマージンを取る。売れなかったら、キャンセル料がかからないギリギリのところでキャンセルする。とくに個人経営の海外旅行代理店にはその手法が広がっているようだ」(ホテル関係者)
実際に海外の旅行代理店を取材すると、こう話した。
「今、日本は観光客が増えているし、ピーク期はホテルを取るのが大変だから、先に押さえる。結果的にキャンセルが出て部屋を多く取りすぎてしまうことはあるけど、もともと予約がなければホテルの売上はゼロ。だからキャンセルしてもしなくても同じでしょ?」(中国の旅行代理店従業員)
その予約のために“他の客が泊まれない”という懸念は全く頭にはないようだ。
旅館側の“逆襲”
日本の予約システムの問題点を指摘する声もある。
「外国人は制度上ペナルティがないなら、ギリギリでキャンセルするのは、むしろ正当な利用者の権利と考えています。“お店やホテルに悪い”という感覚はない。海外では予約時にクレジットカード番号を伝える『ギャランティ・リザベーション』が普及していて、『No Show』でも自動的にペナルティ料金が引き落とされるようになっている。日本のホテルでは、それほど広まっていないことも影響しているのではないか」(中国に詳しいジャーナリストの富坂聰氏)
実際にギャランティ・リザベーションを導入したことで、ドタキャン被害をなくした旅館がある。外国人宿泊客が8割を占める東京・根津の「澤の屋」だ。