財務事務次官とテレビ朝日女性記者の酒席でのセクハラ疑惑は「音声データ」が決定的証拠になった。“会話を録音されるなんて、自分とは無縁の話”と考えてはいけない。巷の飲み会でも、テーブルの上に置いてあるスマホが“動かぬ証拠”を押さえていることが当たり前になりつつある。
ICレコーダーなどの機器をゴソゴソと取り出すのは昔の話。今はスマホをタッチするだけでいとも簡単に録音できて、隠し録りには見えない。机に置かれたスマホが録音中だった、ということがざらにあるのだ。
そうした録音データを証拠として、社内のコンプライアンス窓口などにセクハラやパワハラを訴えるケースは激増しているという。
「2006年に内部告発者を保護する公益通報者保護法が施行されたことに加え、スマホで会話が簡単に録音できるようになった影響が大きい。ハラスメントを認定された上司が配置転換や懲戒処分となる事例が続出しています」(危機管理コンサルティング会社「リスク・ヘッジ」社長の田中優介氏)
組織の中で弱い立場の人間が不正やハラスメントを告発する上で、「録音データ」を押さえることには大きな意味がある。ところが、その方法が手軽になったことで新たな問題も生まれつつある。甲本晃啓弁護士はこう話す。
「相手の同意なく録音していたとしても違法性はなく、裁判などでも証拠として扱われます。そのため、相手が悪意をもって録音するケースも十分考えられます。録音に気づいた場合は“何で録音しているんだ”と怒ったりしないこと。その様子まで録音されて、事態を悪化させかねない。無理やり消させようとするのも同じです。気づいた時点で、一言もしゃべらない。その後、第三者に仲介してもらうなどして話し合いの場をもつことが得策です」
※週刊ポスト2018年7月6日号