住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「新浦安」(千葉県・浦安市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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最近はほとんど聞かなくなりましたが、一時期流行ったのが、町の住民をカタカナで呼ぶ文化。シロガネーゼ(白金)、ニコタマダム(二子玉川)、アシヤレーヌ(芦屋)、コマザワンヌ(駒沢公園)などがありましたが、新浦安にも「マリナーゼ」という呼び方がありました。これらの街に共通するのは、「オシャレな人たちが生き生き暮らす街」というイメージ。実際はどうなのでしょうか?
鉄道路線はJR京葉線のみ。東京駅までは最速17分で、新木場駅で東京メトロ・有楽町線やりんかい線に乗り換えれば、東京の最都心部やお台場方面へもすぐです。ただし京葉線の東京駅ホームは、他の路線(山手線、中央線、新幹線など)から遠く離れており、たっぷり歩かされます。また、京葉線が止まってしまった場合、バスで東西線の浦安駅に出ることになりますが、その混乱ぶりたるや……覚悟が必要です。
道路状況は概ね良好です。埋立地だけあって道は広々としており、首都高速湾岸線とそれに並行する国道357号線で、東西の移動はスムーズ。外環道の三郷南~高谷間が完成したことにより、都心部を経由せずに北関東方面に行けるようになりました。後述する理由もあり、車は持っておきたい街です。
震災で問題が露呈したが……
駅周辺にはイオンやアトレなどの商業施設があり、海側には海外のリゾート地を思わせる並木道が直線状に伸びています。一帯は集合住宅と公園が計画的に整備され、国土交通省の「都市景観100選」にも選ばれました。自転車でふらっと遊びにいける距離には“夢の国”東京ディズニーランドがあります。
ただし東日本大震災では、この街が持つ大きな問題が露呈しました。震災発生後、街の至る場所で液状化現象が発生。建物が傾き、街のあちらこちらに土砂が堆積し、ライフラインの復旧には多くの時間を必要としました。