急成長する企業が、さらなる拡大のために経営のプロをヘッドハンティングするのは、よくあることだ。経営コンサルタントの大前研一氏が、カリスマ経営者として知られるカルビー前会長兼CEOの松本晃氏を迎えると発表したRIZAP(ライザップ)グループの今後について、考察する。
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「結果にコミットする」というキャッチコピーのCMで有名になったRIZAPグループは、2018年3月決算の売上収益が1362億円(前年同期比143%増)、営業利益が135億円(同133%増)で6期連続増収、5期連続増益となった。2019年3月期も売上収益2500億円、営業利益230億円という大幅な増収増益を見込んでいる。
この急成長に伴い同社は近年、大手企業の役員経験者を続々とヘッドハンティングしており、6月24日にはカルビー前会長兼CEO(最高経営責任者)の松本晃氏が新設のCOO(最高執行責任者)に就任した。
松本氏は伊藤忠商事、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人、カルビーと渡り歩いた「プロ経営者」と呼ばれる人物だ。RIZAPグループの瀬戸健社長兼CEOは、記者会見で松本氏の役割について「ヘルスケア分野や海外展開などでのリーダーシップを期待したい」と述べ、プレスリリースにも松本氏が「海外への本格進出」を担当すると明記されている。
だが、瀬戸社長は松本氏のことを勘違いしているのではないかと思う。松本氏は9年間のカルビーCEO在任中、合理的な経営手法を導入して収益性の改善とグローバル化を加速し、売上高を2倍にしたとされるが、海外で会社をマネージした経験は浅いようだ。そういう人にパーソナルトレーニングジムのRIZAPのようなソフト事業の海外展開を任せても、軌道に乗せるのは至難の業だろう。