東京オリンピックを2年後に控えた2018年、首都圏の新築マンション価格は高止まり傾向が続いている。マンションは、庶民には手の届かない高嶺の花になってしまったのだろうか。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員の解説を交えて、「買い時でなくても“買い”の物件」の条件を探った。
建築コスト、人件費、そして競合による土地の仕入れ値の高騰が重なった結果、年々上昇を続けてきた新築マンションの平均価格。現在の相場を「価格はもう天井。さすがにこれ以上は上げられない」と評する井出氏によると、マンションの“高額商品化”に伴う供給戸数の減少にも歯止めがかからない状況だという。
「首都圏の新築マンションの分譲戸数は、2012年の4万8865戸に比べて2017年は2万4440戸と5年間で半減しており、2018年も昨年を下回るペースで推移しています。平均坪単価も2013年の230万円からこの5年間で320万円まで上昇しています。この状況ではそもそも物件自体が見つかりにくく、もし希望に沿った物件があったとしても一般層にはなかなか手が届かないのが実情でしょう」(井出氏、以下同)
特に東京23区内の好立地の新築マンションは、海外投資家の流入で大衆不在のマーケットになっているという。国内の投資家もなかなか手を出さない中、不動産の表面利回りが2%台のシンガポールなどの投資家にとっては、3%台の東京はまだまだ魅力的に映るらしい。
一方で、都心に比べ割安感のある東京都下や郊外の戸建てが、都心のマンションをあきらめた一般層の受け皿になり、着工数も逆転しているという。
およそ買い時とは言えないような状況だが、それでもなお資産性の高いマンションの購入を目指す層にとって、狙い目はどのような物件なのだろうか。井出氏が「穴場」となるエリアを教えてくれた。
「23区内では、近年再開発が進んでいる墨田区、荒川区、北区といった城北・城東地区の物件が比較的手ごろな価格帯で推移しています。なんといっても都心に近く、今後も資産価値が下がりにくいことが強みです。
また、少し離れたエリアでは乗り換えなしでオフィス街に直結するJR沿線、具体的には京浜東北線と中央・総武線の沿線が注目ですね。特にここ最近供給を伸ばしているのが、さいたま市の浦和区と大宮区です。ただ、都心に比べれば多少割安だとはいえ、こういったエリアも高騰していることに違いはありませんので、物件選びは慎重を期す必要があります」