それでもトランプ大統領がそこを攻撃したいということであれば、表向きはアメリカ第一主義、アメリカのために中国と戦うといった体裁をとっているが、実際はトランプが守りたいのは不動産産業、農業などの国内産業であり、敵はアメリカのグローバル企業ということになってしまう。トランプ大統領は従来から、国内で税金を納めていないといった理由でグローバル企業を批判している。こうした見方がアメリカ国内に広まってしまえば、中間選挙、2年後の大統領選挙において、トランプ大統領は不利である。
一方、中国側は当初予想されたよりも、冷静で穏やかな対応となっている。
商務部は9日、マスコミ向けに記者会見を開いている。米中貿易摩擦の影響を軽減する政策として、(1)各企業への影響を評価分析する、(2)対抗措置による税収増加分について、企業や従業員が受ける悪影響を緩和することに用いる、(3)企業による輸入構造の調整を奨励し、アメリカ以外の国から、大豆、豆かすなどの農産品、水産品、自動車の輸入を増やす、(4)国務院が6月15日に発布した「積極的に外資を利用し、経済の高品質な発展を推し進めるための若干の意見」について、実施を加速し、企業の合法的な権益の保護を強化し、さらによい投資環境を作り出すなどの点を指摘している。
短期的には7月中にも発動が検討されている160億ドル分の追加関税措置がどのような形になるのか気になるところであるが、長期的にはこの問題は戦争状態までには発展しないと考えてよいのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。