高齢者の武器は、なんといっても安定した年金収入だ。
「考えてみてください。現役サラリーマンはリストラされると収入がなくなりますが、高齢者は無職でも年金収入が生涯保証されます。月々の年金額は少ないものの、多くの高齢者は別にまとまった貯金も持っている。
銀行にとってはお得意様になるし、全国的に空き家が深刻になっている時代に、賃貸住宅の大家はいつまでも“高齢者には貸さない”などとは言っていられません。むしろ高齢者は優良な借り手として重宝されるようになるでしょう。なにより、日本の個人金融資産1800兆円の53%を60代以上が持っているのです」(相沢教授)
高齢者の社会的信用が高まると、老後の生活設計の選択肢は大きく広がる。
家が借りやすくなれば、マイホームを「終の棲家」と考えるのではなく、定年後に賃貸に住み替え、自宅を売却してまとまった手元資金をつくるという選択が容易になる。銀行などの融資を受けやすくなれば、不意の出費が必要な時のために貯金を死ぬまで残しておく必要はない。運用も手堅いだけの定期預金ではなく、投資に回しやすくなる。
人生100年時代には、「老後の資金」は守るものではなく、豊かな老後の可能性を広げるために「戦略的に使う」という考え方が重要になる。
過去の年表を改竄することはできないが、「お金の未来年表」はいくらでも書き換えられる。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号