ここ10年くらいで、資産形成を取り巻く“常識”は激変した。様々な金融商品が登場し、「お金の置き場所」の選択肢が増えたからだ。では、どのように使い分けるべきなのか。ファイナンシャル・プランナーの清水斐氏が基本となる考え方を解説する。
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「どのくらい貯めていますか?」──そんな質問をすると、少し前までは「預貯金(特に普通預金)」の金額のことを指すのが当たり前でした。「株やFX(外国為替証拠金取引)といった投資はリスクが高い、それよりもリスクが低いところに預けておきたい」という人にとっては、銀行の定期預金をはじめとして選択肢が少なかったのです。
ところが最近は様々な金融商品が増えてきました。それらにはメリット・デメリットがあり、違いを理解し、使い分けることが重要になります。では、「お金の置き場所」はどう考えればいいのでしょうか。
一番のポイントは「いつ使うお金か」ということです。
ご存じの通り、「すぐ使うお金」は一般的な預貯金の普通口座に置いておくのが便利です。預貯金はすぐに引き出せる反面、他の金融商品より利回りが低く、事実上の「ゼロ金利」になっていますから増やすことは期待できません。
「すぐ使うお金」は、一般的に半年~1年分の生活費と言われています。それに加えて「持っていないと不安な金額」の置き場は預貯金をベースに考えましょう。
すぐに使わないお金で「3~5年以内に使うかもしれないお金」は、定期預金が基本となります。ネット系銀行が実施しているキャンペーン金利を見ると、3年定期で年0.2~0.3%の利回りがつくものもあります。
多少金融の知識を身につけたら、個人向け国債を購入してみることも選択肢となるでしょう。こちらは「固定3年」で0.05%の利回りとなっています。それでもメガバンクの普通預金金利0.001%に比べたら50倍の利回りです。
まとまった資金があって、3~5年以上使わない場合は一括で保険料を払い込み、将来受け取れる「一時払い保険」を利用する選択肢もありますが、今は保険の利回りが低いのであまりお勧めできません。同じ理由で学資保険での積み立ても今は最善の手とは言えません。この点は、かつての金利が高かった時代とはまったく景色が変わりました。親世代と同じ手法では通用しなくなったと言えます。
5年以上使う予定がないお金について、元本割れのリスクも受け入れながら「できれば増やしたい」ということであれば、株や投資信託などが選択肢になります。リスク許容度(どのくらいの損失まで対応できるか)に応じて、低リスクの投資信託から高リスクの株式投資まで組み合わせることになります。
投資初心者には今年から始まった「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が向いているでしょう。投資から得た利益にかかる税金(20.315%)がゼロになるもので、つみたて原資は年間40万円、最長20年間まで非課税で運用できます。