相沢幸悦・埼玉学園大学経済経営学部教授は、人生100年時代に余生を充実させるためには、高齢者は「子供に資産を残す」と考えるのではなく、思いきって「借金を残す」といった意識の転換が必要だと指摘する。
「高齢者には、子供たちに家屋敷を残したいとか、せめて自分の葬式代くらいは残してやりたいと考えてつましい生活をして、かなりの資産を蓄えている人が多い。人生80年の時代は、それでも充実した老後の生活は可能でした。しかし、人生100年となると、そうはいかない。定年前からギリギリの生活を続けなければ、子供たちに資産を残すのは難しいでしょう」
そうした生活は充実した人生と言えるだろうか。リタイア後の長い期間を考えると、カネも多くかかる。子供の側も、実家から離れた都会で就職し、マンションも買っているから実家を相続しても住むことはないというケースが非常に多い。
「それなら無理に子供に資産を残す必要もないわけです。これからの高齢者の意識は、持っている資産は“自分たちのために使い切る”という方向に変わっていく。むしろ、資産を使い切って“足りない分は借金を残す”というくらいの発想をしなければ、100年時代の人生を充実させることはできないのかもしれません」(同前)
※週刊ポスト2018年7月20・27日号