オリンピックに起因するコスト高や海外からの投資マネーの影響で、首都圏のマンション価格の高止まりはもうしばらく続く公算が大きい。そんな中、全国のマンション市場に目を向けると、首都圏とは異なる要因によって局地的にバブルが起こっているという。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員に聞いた。
「近年、関西圏や中部圏では都市型マンションを多数供給するディベロッパーが好調で、マーケットを牽引しています。時期によって多少の変動はあるものの、名古屋市中区や京都市中京区の新築マンションは直近3年で平均坪単価が20~30%ほど上昇しました。
同様に大阪市中央区の平均坪単価は2015年の1~3月は220万7000円でしたが、2017年以降はおおむね300万円前後で推移しています。
また大阪や名古屋は東京に比べて、依然としてタワーマンションは投資適性が高いと見られているのも特徴です。諸々の要素を考慮すると、近畿地方のマンション市場は強含みの状態にあると言えるでしょう」(井出氏、以下同)
とはいえ大阪の場合、中央区や北区のタワーマンションが市場を活性化している一方で、過去に人気だった北摂地域や阪神間の動きは鈍く、新築マンションの供給エリア自体は絞られている。こうした状況は大阪だけではなく、全国各地の大都市で「中区・中央区現象」と呼べるような共通の傾向を示していると井出氏は語る。
「2015年ごろまでは東京に集中していた国内の投資マネーが、ここ1~2年は全国の大都市の一等地に分散されています。大阪や名古屋だけでなく、札幌や福岡、広島などの中区・中央区の物件でも竣工後すぐに貸しに出されるケース、つまり投資目的での購入が急激に増えてきているのです。
首都圏外の各都市では、新築マンションの表面利回りはおおむね4%以上。3%台の東京23区と比べて、投資適性が高いと見なされているのは間違いないでしょう」
福岡市中央区を例として見てみると、2015年の1~3月は179万3000円だった新築マンションの坪単価が、2016年から2017年にかけて250万円前後にまで値上がりしている。一見すると堅調な推移のようにも思えるが、いざというタイミングで手を引くのが早いのも投資家の特徴だ。井出氏は全国的なトレンドと化した「中区・中央区現象」の潜在的なリスクをこう指摘する。