35歳で起業した直後、次々と病に襲われ、38億円の資産家から一転全てを失い、生活保護を受ける状態に陥り、また返り咲いた人生を送る男性がいる。彼はなぜ復活できたのか、その生き方を知る諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が紹介する。
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ファンドマネジャーとして活躍してきた並木秀之さん(65歳)はジェットコースターのように上り下りの激しい人生を送ってきた。
起業し38億円の資産家になったが、すべてを失って一時、生活保護を受ける。そこからまた年収3000万円の高給取りに返り咲いていく。
その並木さんが自分の「強み」をはっきりと自覚したのは、32歳のときだった。そのころ彼は大手会計事務所に勤務していた。上司や同僚はエリートばかり。能力の差に引け目を感じたという。
倒産会社の破たん処理に携わっていたとき、企業のトップとともに壇上に並び、債権者の前で土下座することがある。並木さんも、その列に加わり、何の抵抗もなく、深々と土下座していた。
しかし、上司や同僚は違った。土下座しながら、手をブルブル震わせ屈辱に耐えている。それを見て、「私はこの仕事に向いている」と気がついた。弱者であることが、自分の強みだと気づいたのだ。それから彼は自称「土下座専任」になり、優秀な同僚たちのなかで、次第に成果を上げていく。