大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

大前研一氏 国債と株でフォアグラ状態の日銀は「内部爆発」する

もはや日銀に異次元金融緩和の「出口」はない

 異次元金融緩和を続ける日本銀行だが、異次元が常態化してしまったら、この先に何が起きるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、日銀が今置かれている状況について解説する。

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 日本銀行が6月下旬に発表した2018年第1四半期の資金循環統計(速報)によると、日銀が買い入れている日本国債の3月末の保有残高は459兆円に達し、国債全体に占める比率が過去最高の41.8%になった。ETF(上場投資信託)の買い入れを通じた日本株の保有残高も、日本経済新聞の推計では、3月末の時価で約24兆円に上り、東証1部の時価総額の4%弱に膨らんでいる。すなわち、いまや日銀は腹の中に溜め込んだ国債と株で“フォアグラ状態”になっているのだ。

 黒田東彦総裁の日銀は20世紀の古い経済理論を振り回して金利とマネタリーベース(資金供給量)をいじっているだけである。たとえば、3月に就任した「リフレ派」の若田部昌澄副総裁は「金融政策に限界はないと今も思っている」「必要であれば躊躇なく追加緩和すべきだ」「金利を操作するか、資産購入の対象を増やすか、資産の購入額を増やすか。この三つの戦略で臨めばよい」(日本経済新聞/6月28日付)と述べているが、それでは消費は動かない。

 数字をいじるだけなら、その組み合わせは無限にある。なぜ、いくら数字をいじり回しても消費が上向かないのか、その根本原因がわかっていないのだ。

 すでに本連載で繰り返し指摘してきたように、日本がデフレから完全脱却できない根本原因は「低欲望社会」になっていることだ。そして、それを招いているのは、国民の将来に対する不安である。

 今の日本は給料が上がらない一方で税金や年金の負担が年々重くなっている。このため、国民はマインドがシュリンク(縮小)して「低欲望」になっている。少子高齢化・人口減少社会になって景気が低迷しているのに、3月末の個人金融資産は1829兆円に達し、10年前の1459兆円より370兆円(25%)も将来に対する蓄えが増えているのが、その証拠だ。

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