“ちょい出し”は無駄遣いにつながる
一方、必要に応じて“ちょい出し”する人は生活に必要なお金を把握できていないということ。本当は必要ないものまで無駄遣いするケースが多い。長い定年後を考えると、この計画性の有無は死活問題になります。また手数料のかかる時間外にATMでおろすのはもってのほかで、“チリつも”を想像できるかどうかも老後の幸せを分けます」
当然ながら「定率」引き出しを実践するには、資産総額や預金残高をきちんと把握することが欠かせない。“ちょい出し”はそれを困難にする引き出し方ともいえるのだ。
こうした「定率」での引き出しは、投資とのセットになることでその意味を増すことになる。ただし、投資といっても、高リスク商品に手を出す必要はない。71歳元会社員が明かす失敗談から学ぶ点は多い。
「老後には大きなお金が必要になると思い、銀行の営業マンから言われるままハイリスクの投資信託に1000万円投資し、大幅に元本割れしました。妻に内緒だったので何とかバレずに取り戻そうとFX(外国為替証拠金取引)に手を出し、さらにヤケドが広がりました……」
前出・森田氏は「こういうケースはよくある。不安に駆られて無闇にリスクを取ると数年で資産を半減させてしまう」と警告する。つまり、定年後の投資で必要なのは安定した運用だ。「年2%程度の運用で十分」と指摘するのは藤川氏。
「老後生活で儲けようとしすぎるのは厳禁です。老後の資産運用で目指すのは年平均2%程度にしておきたい。この程度なら預貯金や個人向け国債など安全性商品の比率を7~8割、それに国内外の株式や債券、不動産などに分散投資する投資信託を2~3割ほど組み合わせることで目指すことができます。できれば運用期間中の信託報酬が0.5%以下を選ぶのがよいでしょう。
老後の生活設計では家計管理がしっかりしていることが重要。『定率』の引き出し方は、運用がうまくいかない際に、より重要性を増します」
※週刊ポスト2018年8月10日号