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外山滋比古氏が提言 子や孫に資産を残さぬほうが社会は活性化する

子や孫のためにならない

 外山氏は数年前に妻を亡くし、今春から介護付き有料老人ホームで暮らしている。子供はいないが、たとえいたとしても財産を残すべきではないという考えだ。

「人生の決算は、その人一代かぎり。子孫に借金を残すのはもちろんマズいけど、財産を残すことだって避けたほうがいい。何がよくないかというと、子供たちが財産を相続できると“期待”することがダメなんです。

 僕は株を購入する際にも、経営トップが世襲で決まる企業はできるだけ避けるようにしています。自らの努力で何かを獲得するのではなく、“親からもらえる”と思った子供は、『自分の頭で考える努力』を放棄して、保守的になりがちです。それで本来持って生まれた力を発揮できずに終わってしまったら、子や孫にとっても不幸なことじゃありませんか」

 外山氏の「子に相続させない」というスタンスは、「タンス預金より株投資」という考え方とも通底している。個人の資産を、社会に活力をもたらすために使うことが、結果として一人ひとりの幸福につながるという考え方である。

「タンス預金や子供への相続は一見、自分や家族の“個人としての幸福”を大きくするように思えますが、それで経済が回らずに社会全体が衰退したら、個人としていくらかお金を持っていても、最終的には一緒に落ちていきます。社会が豊かでなければ、個人の幸福も十分には得られません」

 お金が循環する社会になるためには、タンス預金を投資に回したほうがよいのと同様に、子や孫への相続を増やすことに執着すべきではないというのである。

「親から受け継ぐのでなく、自分の生活を支える経済力は自分で作り出す。一人ひとりにその当たり前の姿勢があって初めて、社会は活性化していくんじゃないでしょうか。それなのに、近視眼的に子供や孫へ、現金や不動産を残すことのほうが美徳だと思われているような気がしてなりません」

※週刊ポスト2018年8月10日号

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