94歳にして、累計225万部の大ベストセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)の著者である英文学者・外山滋比古氏(お茶の水女子大学名誉教授)は「高齢者こそ投資に挑戦すべき」と提言する。外山氏は、近年の“相続対策ブーム”について子や孫に資産を残すべきではないという持論を述べる。
60年に渡り株式投資を実践し、今も90銘柄を運用するという外山氏は株投資で得た利益を使って、また別の銘柄を購入している。その企業が投資に値するかを調べたりすることが、日々の活力につながっているという。
外山氏は数年前に妻を亡くし、今春から介護付き有料老人ホームで暮らしている。子供はいないが、たとえいたとしても財産を残すべきではないという考えだ。相続が選択肢にないとすれば、株投資で築いた財産を最終的にどうやって使い切るつもりなのか。
「適当な時期に寄付したいと考えています。ただ、日本では、個人の財産を社会に還元する仕組みが確立されていないので、寄付する先を選ぶのがなかなか難しい。欧米では大学や教会、カーネギー財団やロックフェラー財団といった透明性の高い団体があるので、ある程度は安心して渡せる。
日本だと赤十字や、ホンダを創業した本田宗一郎・弁二郎兄弟の寄付で設立された本田財団あたりが候補でしょうか。本田宗一郎は、あれだけの会社の経営トップを世襲にせず、世界的企業に成長させた大人物だと認識しています」(外山氏)