メーカーにとって、技術的にはレベル5の完全自動運転が可能な車の開発は難しくない。「リーフ」をアイコンに、自動運転車開発の先鋒である日産は、自動運転技術戦略の一環として2022年までに、高速道路でアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動制御する自動運転技術「プロパイロット」を20車種に搭載し、日本をはじめ計20か国の市場に投入する計画を発表している。また同年までに、プロパイロット搭載車の販売台数が年間100万台になると見込んでいる。
しかし、ここで改めて考えなければならないのは、果たして、私たちが「高速道路で手離しできる自動運転車を必要としているか」である。
国は自動運転車や無人バスなどの活用で「高齢者の交通事故減少」「地方における移動手段の確保」の実現を掲げるが、一般道での走行はまったくめどが立っていない。どんなに車が進化しても、事故件数が減っても、それは高速道路や、自動運転車が走行可能な地域に限定される。だが、高齢者が本当に行きたい病院やスーパーマーケットは高速道路にはない。
今回、自動運転の取材をしていてずっと脳裏にあったのが、今年、大阪で開催された「バリアフリー展」での光景だ。車いす仕様車をはじめ、福祉車両が展示されている車メーカーのブースは大盛況で、実際に車に乗り込むのは順番待ち。車いすの来場者が介助人と乗車手順を確認したり、すぐに商談が始まったりと、わくわくした熱気に包まれて、ブースのスタッフもてんやわんやだった。
誰もが安穏と日常の移動ができ、ちょっと遠出をしてみようか、と気がねなく思える環境こそが、国が目指すべき車社会の姿なのではないか。災害時にも役立つ移動手段の確保を…その思いが、さらに強くなった。
最後に、アンケートへの回答は簡潔だったが、回答用紙に記されたダイハツ広報部からの「ひと言」を残したい。
「軽自動車や小型車を主体とする弊社は、『先進技術をみんなのものに』のキーワードのもと、お客様の使用実態に最適なシステムをお求めやすい価格で提供すること。そして、広く多くのかたがたに普及させていきたいという想いで、車の開発をしています。
日本の社会で広く使われている軽自動車を生産するダイハツとして、それが普及しなければ意味がないと考えています。そのためには、最適な性能と価格のバランスが大切ではないでしょうか」
※女性セブン2018年8月16日号