その際も、70歳未満で住民税非課税の人は「高額療養費制度」を使えば、月3万5400円を超える分は申請すれば還付される。
「70歳以上で非課税の方だと自己負担額の上限が月2万4600円まで下がります。夫の年収が212万円の課税世帯の場合、自己負担額の上限は5万7600円なので、倍以上の差となります」(ファイナンシャルプランナーの鴇巣雅一氏)
自治体によっては、住民税非課税世帯の高齢者だとインフルエンザの予防接種が無料となる。
非課税世帯は介護面の支援も手厚い。65歳以上の介護サービス利用者で住民税非課税世帯の場合、「高額介護サービス費」を利用すれば、自己負担額が月2万4600円を超えた分は申請すれば還付される。
高齢になれば介護施設への入居が必要となることもある。住民税非課税の人は「特定入所者介護サービス費」を利用すれば、特別養護老人ホームなどの居住費や食費が軽減される。
たとえば日額1380円の食費が650円、日額840円の居住費(多床室)が370円となり、月換算すると6万6600円の居住費・食費が3万600円になる。年間で43万2000円もの差だ。
他にも東京都では、70歳以上で住民税非課税なら、年間1000円の手数料で「シルバーパス」を入手でき、都営地下鉄や都バス、主な私鉄各社の路線バスが無料で乗り放題になる。日々の支出を極力抑えたいシニアにとってはありがたい制度だ。
公的年金は国民の老後の「最低限の生活保障」の意味合いを持つ。人生100年時代において、年金だけでは老後生活が不安だからこそ、多くのシニアは何とか年金を増やしたり、定年後も働いて預貯金を増やそうと奔走する。
だがA夫婦とB夫婦の例で一目瞭然のように、年金収入を減らして非課税にしたほうが公的な負担が大幅に減り、様々なサービスを享受できる。
※週刊ポスト2018年8月17・24日号