投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が8月13日~8月17日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は底堅い展開か。貿易問題を巡って米中の対立は激化し、世界経済への影響を懸念したリスク回避的な円買いが増える可能性があるものの、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続の方針を背景に主要通貨に対するドル買いがただちに縮小するとの見方は少ない。米トランプ政権は、知的財産権の侵害を理由に今月23日から対中制裁関税を実施する。それに対し、中国は同様の規模の報復措置に踏み切るとし、両国の対立は深刻化。通商協議なども予定されていないことから、米中貿易摩擦は長期化の様相を呈している。
足元で発表された中国の経済指標は堅調な内容だが、目先は減速に向かうとの見方も少なくなく、米中の摩擦がさらに激化すれば、リスク回避の円買いが強まりそうだ。ユーロ圏経済のファンダメンタルズや欧州中銀(ECB)の金融政策に買い材料は乏しい。また、ポンドは英国の欧州連合(EU)強硬離脱や政局リスクへの懸念から売られやすい。こうした背景から、米経済指標が堅調な内容となり、FRBのタカ派姿勢を後押しできれば、9月と12月の利上げを見込んだドル買いに振れやすい地合いが続くだろう。
一方、9日に米ワシントンで開かれた日米通商協議(FFR)の初会合では、米国側が2国間交渉の開始を要請し、日本側は環太平洋連携協定(TPP)が日米双方にとって最善との考え方を表明したようだ。日本が米国の要求に応じて日米自由貿易協定(FTA)の交渉を近く開始することが決まった場合、対米貿易黒字縮小の観点からドル買い・円売り材料になるとの声が聞かれている。ただし、米中貿易摩擦激化に対する警戒感は消えていないことから、リスク選好的なドル買い・円売りが大きく広がる可能性は低いとの見方も残されている。
【米・7月小売売上高】(15日発表予定)
15日発表の米7月小売売上高は前月比+0.1%と、6月の+0.5%を下回る見通し。ただ、3月以降はプラス圏を維持しており、7月もプラスを維持できれば個人消費の下振れ懸念は強まらず、ドル売り要因にはなりにくいだろう。
【米・8月フィラデルフィア連銀景況調査】(16日発表予定)
16日発表の米8月フィラデルフィア連銀景況調査は22.0と7月の25.7から低下する見込み。ただし、市場予想とおおむね一致した場合はドル売り材料にはならないとの見方が多いようだ。