リタイア世代になると、「自宅の扱い」に苦慮するケースも増える。「相続税対策」としてキャッシュでの建て替えやリフォームもあるが、「所得税対策」として有効となるのはローンを組むことだ。
「ローンを組んで自宅をリフォームすれば、借り入れた金額の1%を所得税から10年間控除できます。例えば65歳で1000万円のローンを借りれば、1年間で10万円の控除が受けられるということ。年金生活でも所得税が10万円以上の人なら大きな恩恵を受けられます」(円満相続税理士法人代表の橘慶太氏)
もちろんローンは月々の利息+元本を返済する必要があるため、利用の前に控除額と返済額のバランスを見極める必要がある。
退職金は一括で
老後資金の「虎の子」である退職金も節税できる。退職金の受け取り方は一括でもらう「一時金方式」か、分割してもらう「年金方式」かに大別される。社会保険労務士の稲毛由佳氏は、「税金をゼロにするには一括がいい」と指摘する。
「一括で受け取ると退職所得控除が適用され、大卒から定年まで38年間働いた場合は、最大2060万円まで一括で受け取っても課税されずにすみます。平均的な退職金をもらう方はほとんど税金がかかりません。
年金方式の場合は公的年金を月々もらうのと同じ扱いになり、所得税の他にも国民健康保険料や介護保険料、後期高齢者医療保険料など様々な負担が重くなる可能性があります」
「払わない」と「取り戻す」―─それが「年金無税族」として暮らしていくために必要な対策となるだろう。
※週刊ポスト2018年8月17・24日号