8月10日にトルコリラが一時2割ほども急落したのを機に、週明け13日の日経平均株価が440円安となるなど世界的な株安に見舞われている。欧州や他の新興国を巻き込んだ株安がどこまで進むのか不安は高まっているが、はたしてこの「トルコリラ・ショック」が世界的な金融危機を引き起こす契機となり得るのか。世界の金融市場に詳しいグローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が解説する。
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そもそもトルコは多額の対外債務を抱える経常赤字国であり、通貨が下がりやすく、それに伴って輸入品価格が値上がりすることでインフレになりやすい国である。通常、過度なインフレを抑えるためには利上げという金融引き締め策を講じるが、トルコのエルドアン大統領は低金利と大規模インフラ投資によって経済成長を高める政策をとってきた。
その結果、インフレは加速し、ただでさえ通貨安になりやすい状況になっていた。そうしたなか、米国は2016年に発生したクーデター未遂事件に関与した疑いでトルコ当局に拘束された米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏の釈放を求めてきたわけだが、トルコ側がこれを拒否。これに反発したトランプ大統領がトルコの閣僚に経済制裁を課し、トルコからの輸入品の関税を倍増したのをきっかけに、トルコリラ安が一段と進んだ構図だ。
問題は今後の見通しだが、トルコリラが反発基調となるためにはブランソン氏の釈放を認めるなど米国と融和するか、トルコ中央銀行の大幅な利上げが必要となるだろう。ただ、現状ではそのような動きも見られず、日本株や米国株にとっても短期的な売り材料とされてしまい、9月頃にかけて調整が続く可能性がある。