「哲学」も「人脈」も違う
両者は経営哲学の面でも、まるで異なっている。
「柳井氏は『泳げない者は沈めばいい』という言葉を好んで口にし、チャレンジ精神を貴ぶ。『安定』や『守り』に入ることを許さず、困難に食らいついて這い上がる人間を重用するタイプのリーダーです。
それに対し、前澤氏は『人と競争するのが大嫌い』、『仕事は楽しんでやるべき』として、週3回出社や6時間労働を推進したり、基本給やボーナスを全員同額にするなど競争のない会社を実現しています。経営者としても、まったく理念が違いますね」(前出・佐藤氏)
“おもちゃ発言”を紹介した翌日(8月7日)の日経電子版では、2008年の柳井氏の講演で、前澤氏が質問した内容が記事になった。
〈なぜ柳井さんは数字や規模ばかり気にされるのですか。私は売り上げや利益の話よりも、ファーストリテイリングの理念やお客様にどのような価値を提供していくか、柳井さんの話を聞きたいです〉
これに対し柳井氏は、〈君は、自分の会社で数字をつくってから言いなさい〉と答えたという。
裸の付き合い
どうにも相容れない2人だが、共通する人脈がある。ソフトバンクグループ社長兼会長の孫正義氏(61)だ。柳井氏は2001年からソフトバンクグループの社外取締役を務めている。
「2016年、孫さんが自身の“後継者”に据えたニケシュ・アローラ副社長(当時)を退任させ、社長続投を表明した。その際、孫さんが柳井さんに相談を持ちかけ、『引退? 冗談じゃないぞ』と諭されたことが、続投表明につながったといいます。2人は信頼して相談し合う“盟友関係”にある」(前出・経済部記者)