純資産残高の多さは必ずしも過去の運用成績がよかったことを意味するわけではないが、資金流入(運用できる資産)の多さは好成績をもたらす材料になるとされる。この10年間で400%(5倍)を超える運用実績を叩き出している商品がいくつもある。
ただし、長寿投信の“強さ”は「爆発力」ではなく「安定感」にある──そう語るのは、楽天証券経済研究所ファンドアナリスト・篠田尚子氏だ。
「10年前の2008年といえば、世界の市場を混乱に陥れたリーマンショック(9月)が起きた年。長寿投信は、その激震を乗り越えた経験があります。
その後も欧州債務危機(2010年)や東日本大震災(2011年)、チャイナショック(2016年)などの荒波に呑み込まれて運用成績が低迷し、資金流出に歯止めをかけられないまま運用終了(繰上償還)を余儀なくされた投信は少なくありません。
そうした“生存競争”を勝ち抜いてきた実績が評価され、今後の運用の安定性につながると期待されているのでしょう。販売する金融機関にとってもセールスポイントになっています」
「リスクの見積り」ができる
そうした“強さ”を誇る長寿投信は、堅実な投資先を求める老後資産運用とも親和性が高そうだ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、「長寿投信の強さ」として“リスクの見積り”のしやすさを挙げる。
「投資では“どれだけ上がりそうか”に注目しがちですが、特に資産の目減りを避けたい老後資産運用では“想定外の事態が起きた時の下落幅”が重要になってきます。長寿投信には過去10年以上の価格変動データがあり、リーマンショックなどの不況時にどの程度のマイナス影響があったかも確認できる。下振れリスクを織り込めれば投資計画に柔軟性が生まれます」