自分たち夫婦ががんなど重い病気になったとき、「高額な治療費を子供に出させるのは忍びないから」と、手厚い特約保障のついた民間の医療保険への加入を検討している人は多いはずだ。
病気のリスクは75歳からの後期高齢者になるとグンと高まる。がん保険をはじめ、介護特約付きなどの医療保険に加入しておくと、確かに病気や介護が必要になった時の入院費や介護費用負担の心配はなくなるが、そのかわりに保険料は高い。
75歳から10年払いで手厚い特約付きの介護保険(終身保障型)に加入する場合、掛け金総額はざっと300万円ほど見ておく必要がある。夫婦2人なら600万円だ。掛け金は年金だけでは払い切れそうにないから、なけなしの貯金を取り崩すことになる。
果たして、それが「子供に迷惑をかけない」選択なのだろうか。病気への「備え」を厚くすると、日々の生活は苦しくなり、やはり子供の仕送りに頼らざるを得なくなるかもしれない。
「相続」も考えておかなければならない重要テーマだ。「年金を切り詰めてでも、子供や孫に少しでも遺産を残してやりたい」
そう思うのは親心だろう。しかし、相続税を考えると、コツコツ貯めて「遺産」として残すのが得策とは限らない。子供世帯の「子育て負担」が重いようなら、孫の学費や塾の月謝を払い、生前から資産を贈与しておく方が喜ばれ、節税にもなる。良かれと自宅の不動産を残したために、子供の重い負担になっては本末転倒だ。
「終活」も同じだ。「葬儀費用くらいは生前に払っておこう」と互助会に何口も加入するシニアは非常に多い。だが、「これで子供たちは葬儀代を払わなくていいはずだ」と思っていても、掛け金を多く払うほど葬儀は盛大になり、結局、多額の追加費用が請求されるケースは珍しくない。
※週刊ポスト2018年8月31日号