田代尚機のチャイナ・リサーチ

ボーイング社に打撃も 米国内部からも反発が出る米中貿易戦争の行方

ボーイングにとって中国は世界で最も重要な市場の一つ

 米中貿易戦争に対して、アメリカの内側からも反対の声が出ている。中国側の報道を見てみよう。中国人民日報は20日、「アメリカの民衆は貿易戦争を憂いている、ホワイトハウスが中国市場の重要性を認識してくれることを希望する」といった見出しで、米中貿易摩擦に関するアメリカ国内の反応を伝えている。

 中国のメディアが伝えていることなので、中国寄りの内容であることは否めないが、反中姿勢の強い日本のメディアがあまり取り上げない部分が指摘されているといった面もあるので、ここで簡単にその内容を紹介しておきたい。

 イリノイ州シカゴはアメリカ三大都市のひとつであり、ボーイング、マクドナルドなど、グローバル企業の本社が置かれており、アメリカ中西部地区の経済の中心である。同紙記者が、そのシカゴでの取材を通して切実に感じたことは、「アメリカ政府が攻撃を仕掛け、貿易戦争をより深刻にしている点について、各界の有力者は憂慮と不満を抱いている」といった点だという。

 ボーイング社は2013年、1000機目の航空機を中国に納入したが、これには40年の歳月がかかった。しかし、それからわずか5年で、更に1000機を納入している。ボーイング社にとって、中国の高成長は大きなチャンスをもたらしている。また、ボーイング社は中国企業と多層的なパートナーシップ関係を深めている。製造する航空機に関して多数の部品が中国製であり、中国商飛、中航工業とは合弁事業を行っている。上海近郊に位置する舟山で合弁工場を建設中で、ボーイング社は中国に対して長期投資を行っている。ボーイング社にとって、中国は世界で最も重要な市場の一つである。

 イリノイ州に本社を置く企業の中で、現在400社余りが中国に投資しており、40社余りの中国企業がイリノイ州に拠点を持っている。2016年のイリノイ州における対中輸出額は50億ドルだが、このうち38億ドルが貿易戦争の影響を受ける。具体的には13億ドルの大豆、4.5億ドルの自動車、1.6億ドルのパン、ケーキ、1.3億ドルの除草剤などだ。このうち、大豆については今年、豊作の年を迎えているものの、貿易戦争によってそれが大きなリスクとなっている。

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