アナリストたちは、「貿易戦争には二重の衝撃がある。一つはグローバルなサプライチェーンを傷つけることであり、もう一つは輸出市場を傷つけることである」などと分析している。
8月20~23日にかけて2000億ドルの中国からの輸入品に対する追加課税措置に関する公聴会が開かれ、23日には米中が160億ドルの追加関税を発動する予定である。アナリストの分析が示すように、貿易摩擦の激化はアメリカ、中国だけの問題ではなく、日本、韓国、台湾を含め、グローバルなサプライチェーンに組み込まれている国々にとって大きな影響を与える。日本の株式市場においても、これは重大な問題である。
アメリカ国内においては、グローバル企業、輸出競争力の高い農業、エネルギーなどの一次産業から、一般消費者まで、広く影響を受ける。大統領の権限は大きく、また、政権内には保護貿易主義者が多いとはいえ、アメリカは民主主義国家である。
中国のハイテク産業がアメリカ企業と強く結びついて発展しているといった現状を見る限り、保護貿易でその発展を遅らせることはできても、阻止することはできない。それはアメリカの有力なハイテク企業、金融機関の収益チャンスを奪い、国際競争力を落とすことになるからだ。トランプ政権の保護貿易主義に限界があるのは間違いないだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。