まさしくこれが、“霞が関のレトリック”なのであろう。人事院総裁が提出した「公務員65歳定年制」についての意見書の中身である。
「民間企業の定年延長を促進するため」という名目で役人の“特権”を肥え太らせ、自分たちの待遇が改善されると見定めたポイントでだけ「水準は民間に合わせた」という理屈を持ち出す──狡猾極まりない“修辞法”に、決して騙されてはいけない。
生涯賃金が3000万円アップ
安倍政権がなお「働き方改革」を看板にするなら、真っ先に「働き方」を変えさせるべきは不祥事が絶えない公務員だろう。
文科省の前局長は補助金と引き替えに息子を医大に裏口入学させ、別の幹部は接待漬け。予算編成権を握る財務省の前次官は女性記者を呼び出してセクハラ三昧、国税庁の前長官は国民から重税を搾り取りながら、国有地の格安売却を隠すために公文書まで改竄させていた。官僚腐敗はとどまることを知らない。
そんな折も折、8月10日に一宮なほみ・人事院総裁が国家公務員の「65歳定年制」導入を求める意見書を安倍首相に手渡した。お盆休みに入る前日に提出したのは、わざわざ国民が見落としやすいタイミングを選んだようにも思える。
意見書にある公務員版“働き方改革”は、国民が期待する公務員の規律を強める内容ではなく、逆に、特権的待遇を増やす内容なのだ。意見書には定年延長計画の骨子が書かれている。
(1)俸給/61~65歳の給与はピーク時の7割を保証
(2)諸手当/残業手当、地域手当、住宅手当、単身赴任手当、寒冷地手当は60歳前の職員と同額
(3)ボーナス/全額支給
(4)身分/国家公務員のまま──というものだ。