人生100年時代では、60歳は「まだまだ現役世代」とみなされる。まだまだ稼がなければならない時期だ。もし、そんな時期に重い病を患ってしまったら、長い闘病生活でかさむ医療費、そして休職による収入激減という不安が襲ってくる。
だが、公的医療保険(健康保険)には、医療費が高額になった際に自己負担額を一定額以下に抑えられる「高額療養費制度」がある。70歳未満で年収が約370万円から約770万円までの場合、上限額は月8万円程度。それ以上の自己負担はかからない。
注意が必要なのは、制度の利用に“タイムラグ”が生じることだ。ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏がいう。
「高額療養費制度の利用者は、原則として医療機関で医療費を支払い、後から健康保険組合などに上限を超えた分の払い戻しを申請します。払い戻しまでに数か月かかることもある。長期入院や手術をしたら、一時的に高額の現金を用意する必要があります」
後から戻って来るとはいえ、高額のキャッシュを支払うと家計がピンチになりかねない。やむを得ず子供に頼らなければならない事態も起こりうる。そんな時に備えるのが「限度額適用認定証」だ。
「自身が加入する健康保険組合の窓口で、予め『限度額適用認定証』を取得しておくと、医療機関に提出するだけで、窓口で請求される額が高額療養費制度適用後の上限額までとなり、立て替え払いが不要になります」(森田氏)
入院や手術の予定がなくても取得できる。
「健康に問題のない平時に取得しておけば、いざ病気になっても現金の心配をしないで済みます。有効期限は1年ですが、何度でも申請できる。毎年の誕生日にこの認定証を申請している人もいます」(森田氏)
※週刊ポスト2018年8月31日号