日本人男性の平均寿命は80.98歳。「相続」について考えるなら、70代からしっかり準備をしておきたい。とくに重大なテーマが「自宅」の扱いである。円満相続税理士法人代表の橘慶太氏が指摘する。
「誰も住む予定がないのに親が自宅を残して亡くなると、子供には大きな負担になる。たとえ相続税がかからなくても、毎年固定資産税を納めなくてはなりません。
加えて、管理費用も馬鹿にならない。もし自治体から“周囲の景観を損ねる空き家”だと認定されると、税金が一気に跳ね上がります。東京都練馬区を例にすると、30坪で通常なら年13万円ほどの固定資産税が、自治体に空き家認定されると約60万円に急騰します」
子供にそんな重荷を残すくらいなら、生前に手を打っておきたい。
橘氏は、金融資産は少ないが自宅だけはあるというシニアは、「リバースモーゲージ」を検討できると指摘する。
「高齢者が自宅を担保にして公的機関や銀行から資金を借り入れるローン制度です。自宅に住み続けながら老後資金を調達できます。融資限度額は自宅の不動産評価額の5~8割程度で、死亡時など契約が終了した時点で自宅を処分して一括返済します」
この制度を使えば、子供を頼らず「自己責任」で老後資金をまかなえるうえ、死亡と同時に自宅を処分することができる。
ただし、評価額が低い不動産の場合は、リバースモーゲージの対象とならない場合も多い。その場合、生きているうちに自宅を売却することも考えたい。
生前に自宅を売却する場合は、譲渡所得3000万円までが非課税となる税制優遇制度などがある。ただし、不動産の売却は短期間ではまとまらないケースが多い。そのため早めの段階で選択肢に考える必要がある。
※週刊ポスト2018年8月31日号