「優秀なビジネスマンは強いポーカープレイヤーと共通点がある」と言うのは、トルコ人エコノミストのエミン・ユルマズさん。現在は株アドバイザーとして活動するエミンさんは、過去には野村証券でM&Aのアドバイザリー業務などを行った経験もあり、数多くの優秀なビジネスマンを見てきた。一方でポーカープレイヤーとしての顔も併せ持つ。
「優秀なビジネスマンと強いポーカープレイヤーにはいくつか共通点があると考えています。ポーカーから手軽に学べるビジネスの心得は意外と多いです。わかりやすいところでいえば合理的な判断能力です」(エミンさん・「」内以下同)
ポーカーは合理的な思考を身につけるための訓練に
エミンさんが言うポーカーは「テキサス・ホールデム」という種類で、映画『007 カジノ・ロワイヤル』で登場したことでも有名。あらかじめ5枚の手札が配られるのではなく、2枚手札を配られたところからベットタイムが始まる。心理戦が際立つことも特徴だ。
「ポーカーが強い人は、『もし今勝負に行ったら』なんていう感覚的な思考に頼りません。私が見てきた優秀なビジネスマンも、希望的観測に任せず、事実から合理的に思考を組み立てる人が多かったです。ポーカーはこの思考法をスピーディーに訓練することができるのです」
ポーカーは運勝負ではなく、「期待値のゲーム」だという。その都度、期待値に応じた正しい判断を続けることによって、中長期的に結果がついてくる。ポーカーで遊びながら、勝つ方法を培うなかで、合理的な判断をするクセがつくという。
テキサス・ホールデムは、ゲームの回転が速い。最大でも4ターンしかなく、およそ18回のターン(ツモ)がある麻雀と比べると、1回のゲーム(ハンド)時間が圧倒的に短い。素早くゲームが進行する中で、「相手プレイヤーの考え」や「現在の手札での期待値」を考え、新しいゲームに移るたびに頭をリフレッシュさせる必要がある。この作業を短時間で何度も繰り返すうち、勝つためには希望的観測を捨て、期待値に沿うプレイをしようと心がけることになるので、合理的な思考の訓練になる。
「ポーカーもビジネスも短期的には運により、うまくいくことがあります。しかし偶然の成功は、甘い希望や考えに陥りやすい一因となります。目先の勝ち負けにとらわれないことも、最善の判断を行うための秘訣です」