“過去の栄光”にとらわれた残念な例
エミンさんはポーカーの大会で、6時間もプレイしたにもかかわらず、最初の数時間はすべてフォールド(勝負を降りること)し、勝負に行った回数は終盤のたった数回ということもあった。配られるカードや他プレイヤーの動向、場の状況から割り出した期待値を淡々と追い求めた結果、その大会で優勝することができたという。しかし、前年度の大会では決勝で負けている。
正しい判断をしているときでも、短期的に負けることがあるのは仕方がないこと。タチが悪いのは、勝ってしまった経験なのだという。
「過去の成功体験が頭をよぎり、それに固執してしまう人がいます。ポーカープレイヤーでも『自分はこのやり方で成功できた』『自分はこのタイプだから今がある』という人がいまて、なかにはポーカーの大会で数億円儲けたという人もいますが、数年後には消えていることも多いです」
エミンさんは現在の仕事柄、新規上場企業に企業訪問することもしばしばで、経営者においても過去の栄光にとらわれた残念な人を目にすることもあるという。
「話を聞くと『100年続く会社にします!』『1兆円企業への成長が目標』などの漠然とした事業展望ばかり。そういった経営者は欲に駆られて視野が狭くなり、合理的判断ができなっていきます。予想どおり、その後の企業の成長は芳しくなかったです。
優秀なビジネスマンは、自尊心を持ち込まず、自分をアップデートできる人。そうした人が成功を積み重ねていきます。ポーカーも対戦相手や攻め方は常に変化するので、過去をリセットして、毎回、気持ちを新たにして臨む姿勢が求められます。ポーカーはビジネスに繋がる能力を鍛えられるために最適です。ビジネスマンの皆さんもぜひ体験してほしいですね」
日本国内でのポーカーはもちろんお金を賭けることはできないが、ポーカー台でプレイすることは可能。
「日本でもアミューズメント施設でポーカーができる場所はたくさんあります。女性ディーラーも多く、未経験者でも優しく教えてくれますよ」
【PROFILE】エミン・ユルマズ:エコノミスト、為替ストラテジスト。1996年に国際生物学オリンピックで優勝後、1997年に日本に留学。東京大学工学部卒、同大学院で生命工学修士も取得。野村証券において、M&Aアドバイザリー業務や機関投資家向けの営業を経て、2015年に「四季リサーチ」へ入社。2016年「複眼経済塾」取締役・塾頭就任。エコノミストに加え、ポーカープレイヤーとしても活躍する。ツイッター@yurumazu