今や喫煙者の肩身はすっかり狭くなり、ベランダで煙草を吸う“ホタル族”さえ絶滅するかもしれない。上の階からのクレームが寄せられるのだ。受動喫煙の危険性はすでに知れ渡っているが、離婚する妻が喫煙の被害を訴え慰謝料を請求した場合、認められるのか。弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
10年間連れ添った妻と離婚することに。夫婦の財産は折半だと考えていたのですが、妻は私の喫煙に問題があるといい出し、自分は長年、家庭内で受動喫煙に苦しんできたのだから、その分を慰謝料として財産分与に乗っけるべきと主張しています。このような場合、受動喫煙は慰謝料の要因になりますか。
【回答】
継続的な受動喫煙状態により、健康被害の発生リスクが増加することは否定できません。平成14年制定の健康増進法は学校、病院や飲食店など多数が利用する施設では、受動喫煙の防止措置に努めるよう求めています。
受動喫煙のトラブルは、職場が大半です。使用者には労働者が職場で健康を損なうことがないようにする安全配慮義務の一環として職場の状況に合わせた受動喫煙対策を講じる法的な義務があります。
数多く提起された職場での嫌煙権訴訟は、大半が棄却されていますが、喫煙者の隣席からの移動を求めても拒否され、結果的に受動喫煙による急性障害が疑われる症状が発生し、受動喫煙が原因との診断書も提出された事案では、少額ながら慰謝料が認容されています。これは平成8年の事案ですが、職場の禁煙が常識になった今日なら、大きな問題になったと思います。