家庭では夫婦は相互に助け合う義務があります。配偶者の健康を損ねる慣習を慎むのは当然です。職場よりも長い時間、もっと密接に接する家庭内であれば、受動喫煙による健康被害の可能性が否定できない以上は奥さんが禁煙を求めれば、これを尊重、庭などで吸うなどの配慮が必要となります。
健康被害が現実に生じ、受動喫煙に起因すると証明されれば、治療費も加味しての慰謝料が認められるでしょう。そこまでの状態に至っていないとしても、妻の訴えを無視して度を越した喫煙をしていれば、一種の嫌がらせであり、それ自体が不法行為として慰謝料の根拠になると思います。
昨年、東京都では「子どもを受動喫煙から守る条例」が制定され、子供と同室での喫煙を禁止しました。子供の健康保護が目的ですが、今や家庭内の喫煙も法令によって禁止される時代になった、ということです。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年9月7日号