体当たり取材で知られる「女性セブン」の名物還暦ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、平成最後の夏とともに消えゆくものを振り返った。
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平成最後の夏といえば、とんでもない猛暑をさらに暑苦しくしたスポーツ界のおじいさんたちのジタバタ劇が目についた。「男、山根明」と同い年、78才のスーパーボランティア・尾畠春夫さんの活躍がなかったら昭和の男の印象は下げ止まらなかったんじゃないかしら。
とはいえ私も、昭和ど真ん中の32年生まれ。夏が去り、涼風が立つこの頃は、“夏草や 兵どもが 夢の跡”なんて大暴れしたおじいさんたちに郷愁を覚える。時計の針は止まってくれないのよね……。
8月15日、終戦記念日にニュースを見ていたら天皇皇后両陛下が黙祷するお姿が目に入った。戦前生まれで、太平洋戦争の記憶を持ったおふたりが戦没者を追悼するのは今年が最後だと思うと、なんとも複雑な気持ちになった。
私の叔父は家族の大反対を押しのけて志願して、18才で南の島で戦死している。祖父は97才で死ぬまで、「あのバカ野郎!」と罵っていた。実家の隣に住んでいたおじさんのお尻には、戦地で撃たれた傷跡があった。「赤犬を食べたし、食べるものがなさすぎて蚊も食べた」と、平然と話していた。