スーパー事業の低迷と対照的なのが、ネット通販の伸張である。中でも最大手の米企業・アマゾンの存在感は圧倒的だ。経営者向け雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏が解説する。
「これまでの日本の総合スーパーの強みは、あらゆる商品が1か所の店舗に揃っていることだった。しかし、2億種類以上の商品を揃え、自宅にいながらスマホで注文できるアマゾンには、効率の面で敵わない。2010年には約4370億円だったアマゾンの売上高は、2017年度には約1兆3300億円と3倍に膨れ上がった。効率を求める同じ戦い方では、小売業は太刀打ちできなくなってしまった」
しかしだからこそ、流通のガリバー・アマゾンが小売業を侵食する中で、ドンキの成長は異彩を放っているのだ。
「魔境」vs「効率」
ドンキがアマゾンに侵食されない理由はどこにあるのか。前出・関氏が言う。
「ドンキの店内を回ると、天井近くまでゴチャゴチャと商品を積み上げられている“圧縮陳列”という独自の陳列方法を採っています。加えて、既存スーパーの整然とした動線に比べて、迷路のように入り組んでいる。思わぬところに安売り品を並べて、宝探しのような感覚で客の滞在時間を長くする効果を生んでいる」
創業者の安田隆夫氏が、「魔境」と名付けたこの陳列法は、効率を重視するアマゾンとは対極をなす“逆転の発想”だろう。新宿歌舞伎町店を訪れると、入ってすぐの天井近くにリュックサックが売られ、その下には靴下、お風呂グッズと並んでいた。1階には他にも、お菓子、制汗剤、パーティグッズと様々な商品が雑多に陳列されている。
こうした商品の値付けや仕入れを、店舗近隣の客層によって変えている点も、全国一律サービスを提供するアマゾンとは異なる。