「大手チェーン店であるほど、陳列や値付けは本社の決定によって一律に決められることが多い。しかしドンキは、店舗のスタッフに取り扱う商品の品揃えや、陳列方法を任せているため、店舗周辺の客層に合わせた商品構成や値付けができ、集客につながっている。
たとえば、都心店では若者や外国人客などを意識した珍しい商品を前面に出す一方で、郊外店では生鮮食品や日用雑貨などの生活に密着した商品を取り揃えることで、ファミリー層からシニア客まで幅広い客層に訴求力を持たせている」(前出・経済部記者)
「人」vs「ネット」
今後は、前述した2020年までに500店舗突破を目指す拡大戦略の成否が、ドンキにとって大きな分岐点となる。前出・関氏はこう言う。
「ドンキがアマゾンに勝る強みは、店舗ごとに独自の販売戦略を立てるスタッフがいる“人の力”でしょう。今後、足腰の弱いシニア層が多い地域では圧縮陳列をやめてみるなど、顧客のニーズに沿って拡大することができれば、アマゾンに対して風穴を開けることもできるのではないか」
ドン・キホーテは、セルバンテスが小説に描いた主人公がごとく、流通界の“巨大風車”に挑んでいる。滑稽で無謀に見える構図ながら、そこにはしたたかな戦略が隠れている。
※週刊ポスト2018年9月14日号