9月4日に放送された『クローズアップ現代+』(NHK)でも特集され、注目を集めている「アドフラウド」。ネット上の「不正広告」を意味するもので、番組中ではスマートフォンでアダルトサイトを閲覧していたところ、まとめサイトに裏で飛ばされ、別の画面で広告を見たことにされているという状況が説明された。
ネット広告の場合、広告が表示された回数に応じて費用が発生するケースが一般的で、これだと見られてもいないまとめサイトの広告に対して広告主がムダなカネを支払っていることになる。番組中では、九州地方のある市役所が広告主となって出したネット広告の事例が紹介され、市の担当者もこうした事態を把握していなかったという。同市が広告していたものは「ふるさと納税」で、和牛や鰻の写真が掲載された広告が、想定していなかったまとめサイトに登場していたのだ。また、この広告を受注した代理店も、その下で広告を配信していた配信事業者もその事実を把握していなかったとし、困惑していた。
こうした巧妙なアドフラウドの対策として、同番組にも出演した広告代理店出身のネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「広告主はデジタルが難しいとさじを投げるのではなく、キチンと勉強すべきだし、代理店に丸投げすべきではない。代理店や配信業者も自身が掲載を依頼するサイトを正確に把握すべきである」と意見している。
アドフラウドだけでなく、ネット広告全般について、「広告主により知識レベルに大きな差がある」と語るのは、大手広告代理店のデジタル広告関連部署のプランナー・A氏だ。同氏はネットに非常に熱心な広告主を担当しているが、きちんとした効果検証をしつつ、ネットで行った施策についてはネットユーザーの反応を事細かに分析・評価することが求められているという。この作業は広告主と代理店双方で行い、意識を共有化する。
「アドフラウドに気付かないのは、もしかしたら仕方がないかもしれません。しかしながら、投下したコストに見合うリターンがあるかどうかというのは、最低限検証する必要があるはずです。アドフラウドにひっかかっている広告主は、効果の低さに気付くべきなんですよ。我々は、それぞれの施策に伴うKPI(評価指標)は明確化しています。たとえば、ツイッターのRT(リツイート)数や、予め設定しておいたニュースポータルの目立つ場所に出るか、といったところも含めて検証し、効果が出ない場合はその業務を外注した会社に問い合わせます」(A氏)