8月末に、新興国通貨が大きく下落したが、その影響は米ドル、ユーロ、日本円などの値動きにどんな影響を及ぼすのだろうか。
アルゼンチン・ペソが対ドルで急落し、最安値を更新したことで、8月30日、アルゼンチン中央銀行は、政策金利を45%から60%に引き上げている。アルゼンチン国内のインフレ率を抑えると同時に、通貨アルゼンチン・ペソの防衛を目的とした利上げだ。
ただし、結論としては、アルゼンチン・ペソの金利を引き上げても、為替の「アルゼンチン・ペソ売り」を止められないだろう。アルゼンチン・ペソの金利で、通貨防衛を計るのならば、その政策金利を、200%とか、300%、もしくは、それ以上に引き上げる必要があるからだ。
それは、事実上、不可能だろう。国の政策金利を長期にわたってそこまで引き上げることは、国家の金融政策とは呼べない。それは、国家がコントロール不能になっていることを表明しているに過ぎない。
たとえばその国で生活している国民が、住宅ローンの金利が200%、300%になった時に支払い続けることが想像できるだろうか。言い換えれば、『借金をして、その元本の2倍、3倍の利息を支払っても、元本の借金が残るという状況を、受け入れることができるのか?』ということだ。
通貨アルゼンチン・ペソの急落は、メキシコ・ペソ、南アフリカ・ランド、トルコ・リラの下落に波及している。そして、新興国通貨の下落は、豪ドルの下落にも波及している。
一方で、新興国通貨の下落は、「安全な避難通貨」への資金(資本)移動を促している。新興国通貨を売って、「安全な避難通貨」である米ドルやユーロ、日本円などに、資金をシフトさせているのである。