「安全な避難通貨」の中での強さの順番
実際、新興国通貨に対して、米ドル、ユーロ、日本円は、どれも価格上昇している。しかしながら、新興国通貨から「安全な避難通貨」への資金移動が、直接的に、ドル/円やユーロ/ドル、ユーロ/円の相場を動かす要因になる訳ではない。新興国通貨と比較すれば、米ドル、ユーロ、日本円は、どれも「安全な避難通貨」だからだ。
だから、マーケット(市場)は一歩先に進んで、複数ある「安全な避難通貨」の中で、米ドルとユーロと日本円では、どこに資金を預ければ良いのか、という選択を行っている。
米ドルと日本円を比較すると、日米の貿易問題が顕在化しつつあるので、ドル/円には「ドル売り円買い」のプレッシャーがかかっている。つまり、今の時点では、日本円の方が米ドルよりも強いことを意味する。
ユーロに関しては、ECB(欧州中央銀行)が、すでに、テーパリング(量的緩和策の終了)を表明しており、なおかつ、ユーロの政策金利に関しては、「2019年夏まで、現行の過去最低水準にとどまる」といった見通しを発表している。
米ドルの政策金利は、上昇傾向を維持しているので、金利政策から判断すると、当面のところは、ユーロから米ドルへ資金シフトが起こりやすいだろう。
つまり、ユーロ/ドルでは、「ユーロ売り米ドル買い」の傾向となり、今の時点では、ユーロより、米ドルが強いということを意味している。
まとめると、米ドル、ユーロ、日本円の強い順番は、「日本円>米ドル>ユーロ」となる。その前提に立つならば、ドル/円は「売り」、ユーロ/円は「売り」、ユーロ/ドルは「売り」と判断できるだろう。
(2018年09月10日東京時間14:30記述)
◆松田哲(まつだ・さとし):三菱信託銀行、フランス・パリバ銀行、クレディ・スイス銀行などを経て、オーストラリア・コモンウェルス銀行のチーフ・ディーラーとして活躍。現在は松田トラスト&インベストメント代表取締役として外国為替や投資全般のコンサルティング業務を行う。HPは「松田哲のFXディーラー物語」。メールマガジン「松田哲の独断と偏見の為替相場」も発信中。