アップルが自社でモノを作らないのはそれが合理的と考えているからだろう。インターネットなど通信サービスの飛躍的な向上や、生産現場におけるモジュール化といった技術進歩に、企業経営の効率化、高度化が組み合わさった結果として、アップルを筆頭に多くのアメリカ企業は自発的に国際化、自由化した。
アップルはアメリカでマーケッティング、商品デザイン企画を行い、コアの半導体はアメリカ、電子部品・素材は、日本、韓国、中国などから調達し、組み立ては台湾企業によって中国で行っている。これが現時点でもっとも効率的で、良い製品を、速く、安く作ることができる体制であると考えているのだ。
関税をかける形で、中国で生産するコストを無理やり引き上げても、これまでに組み上げてきたサプライチェーンを簡単には崩すことはできない。短期的には製品価格を引き上げることで対応することになる。
USTRのライトハイザー代表は、2000億ドルの追加関税措置の対象として、「中国製造2025計画(*注)に関連する製品で、化学品、紡績品、食品、服飾・手袋、電子産品、金属製品、自動車部品などである」と説明している。こうした製品も程度の差はあるだろうが、追加関税分はおおよそ価格上昇に転嫁されることになるだろう。
【*注:2015年5月に中国政府が発表した、中国における今後10年間の製造業発展のロードマップ】
トランプ大統領は7日、移動中の飛行機の中で、2000億ドルに加え、さらに2670億ドルの関税を課す準備はできていると発言している。これは中国からの輸入品すべてに関税をかけることに相当する。