私たちは、より多くのお金を欲しがる。私たちの暮らす社会は、お金がないと生活できないシステムだからだ。ただし、お金を欲しがる理由は生活のためだけはない。10年で元本を60倍にした個人投資家兼USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のマーケティング・ディレクターの秋山哲氏は、著書『お金からの解放宣言』(かんよう出版)の中で、私たちはなぜお金を欲するのかを説明している。以下、秋山氏が解説する。
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現代社会において、お金は私たちの欲求を満たす上で必要不可欠です。つまり、私たちがより多くのお金を欲する理由は私たちの欲求を満たすためです。詳細は著者の中でも述べていますが、私たちの欲求が何なのかを考える上で、「マズローの段階欲求説」が参考になるのでこの説に沿って考えてみましょう。
アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローは、人間の欲求を5段階に階層化しました。マズローは「人間は持っている欲求がある程度満たされると、次の段階の欲求が芽生える」としています。この理論に即して考えると、私たちがお金を欲しがる最初の理由は、「必要最低限の生活」を営むためです(生理欲求)。これは現代においては、生きるために食べること、安全な住む場所を確保すること、体温を保つために必要な衣類を持つことなどです。
最低限の生活ができてくると、次に経済的な安定や保証を求めるようになります(安全欲求)。経済的により安定した暮らしがしたくなるので、テレビ、パソコンなどの電化製品、家具、車などを欲しがります。また、病気や怪我などで働けなくなった場合の生活保障も求めるようになります。そのために各種の保険に加入して安心と保証を買うことになります。また、自身の老後不安の解消や、子どもがいる方は子どもの将来の安定のためにお金を欲しがるようになります。
経済的な安定や保証がある程度満たされると、他人から必要とされたい、他人から愛されたいという欲求(社会欲求)を満たすためにお金が欲しくなります。人と繋がっていたいから職場の同僚と飲みに出かけたり、知り合いとの繋がりを感じたいからSNSで写真投稿をするために話題のスポットに出かけたりしてコメントや「いいね」をもらったりします。