また、新エネルギーへの代替、電気自動車の急速な拡大、中国をはじめ世界的に環境基準が強化されていることなどから、原油の需要見通しは弱含んでいる。さらに、中国はアメリカにとって最大の原油輸入国である。米中貿易戦争の激化で今後、中国の原油輸入量が大きく抑制される可能性も指摘されている。
世界全体を見渡せば、イラン、サウジアラビアをはじめとした中東の産油国やロシアはアメリカにとって強力なライバルであり、できることなら外交上圧力をかけてでも、これらの国々の原油生産を抑えておきたいところだろう。国際政治環境が不安定化しかねない状況である。
原油価格動向次第では、これが次の金融危機の引き金になりかねない。金利上昇、原油価格下落には特に注意したい。
逆の見方をすれば、アメリカにとって金利の低下、原油価格の上昇、中東情勢、対ロシア外交の不安定化は好材料である。アメリカ経済や株式市場を見る上で、こうした視点も重要となるだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。有料メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も展開中。