「男性から『君は帰れるのか?』と言われたので、『歩きます』と言うと、『ウチはどこなんだ?』と聞かれました。そこで『○○です』と答えると、『一緒に(タクシーに)乗っていこう』と言ってくれたので、タクシーに便乗させてもらうことにしました。
タクシーの中では、問われるがままに自分が○○大学の3年生であること、運動部に所属していること、まもなく始まる就職活動のことなどを話すと、降り際にその男性が、救護にあたった時の私の対応を褒め、『もし興味があるなら連絡してきなさい。君なら大歓迎だ』と言って、名刺をくれたのです。その男性は、大手総合商社の役員クラスの人でした」
それからほどなくしてAさんは就職活動の時期を迎えたが、元来優秀だった彼は第一志望の会社から内定をもらえたため、その人には連絡せずじまい。周りの友人から「もったいない」「出世コースかもしれなかったのに」など、散々羨ましがられ、囃し立てられたという。まるで現代のおとぎ話のような経験をしたAさんは、今では某大手企業で“採用する側”に回っており、
「あの時、連絡して即内定ということはなかったでしょうが、他の受験者よりスタートラインが遥かに前だったのは間違いないとは思います」
と、“事件”を回顧。就職活動で苦労する学生は少なくないが、思わぬところにチャンスが転がっていることもあるようだ。