人生100年時代を迎え、定年後の家計のやり繰りはどんどん難しくなっている。年金や退職金の備えだけでは不安だからと、「アルバイト」に精を出す60歳以上も多い。なるべく負担が少なくて、稼ぎがいい仕事を―─そんな探し方をする人が大半だが、そこには「危ない仕事かどうか」という視点が抜け落ちていないだろうか。
「郵便受けに“お知らせ”を投函するだけで、週にいくらかもらえるなら……」
と考えて広報誌配布のアルバイトを始めた82歳男性。配布先の家屋の石段を上っている最中、思いがけずバランスを崩して背後に倒れ、そのまま帰らぬ人に―─。
この一件は今年7月、実際に発生した死亡事故だ。
原則60歳以上の会員に業務の斡旋などを行なうシルバー人材センター(2018年3月末時点で会員約71万人)によると、2017年度に起きた事故件数は5701件(死亡事故含む)。NHKが調査したアンケートの報告によれば、4年で6.5倍の数に増えている。
最も多い事故は「転倒」(1783件、うち死亡3件)で、以下「蜂、犬、蛇等に刺される、噛まれる」(956件、うち死亡1件)、「墜落、転落」(928件、うち死亡12件)、「交通事故」(471件、うち死亡7件)、「切れ、こすれ」(424件)と続く。
いずれも背景には加齢に伴う問題がありそうだ。
「会員の平均年齢は72歳で、筋力や敏捷性といった身体能力が低下しており、足が滑る、躓くなどのアクシデントに対応できません。それゆえ骨折や入院に至るケースも珍しくない」(全国シルバー人材センター事業協会の福島孝・事業部長)
自分の体を守るため、事故の実態を知る必要がある。
※週刊ポスト2018年10月5日号