価格が高い割には昨年発売されたiPhone Xと比べて、ユーザー目線からすればほとんど変化が見られず、それが不振の要因であるといった指摘が多い。また、iPhone 8の後継機種となるiPhone XRが10月19日に予約販売、26日には正式販売が開始されるが、こちらは中国では標準仕様となりつつあるダブルSIMカード(2つの電話番号)が初めて採用されるので、人気が集中するのではないかとみられている。iPhone Xs、iPhone Xs Maxではなく、iPhone XRを選ぶユーザーが多いだろうといった指摘もみられる。
iPhone Xs 256GBの中国国内販売価格は1万99元であるが、設計上、iPhone Xと共通部分が多い。中国本土マスコミによれば、原価コストは約2600元(380ドル前後)とみられ、iPhone Xと比べると10%程度のコストダウンとなるようだ。
380ドルの内訳は、サムスン電子の有機LEDが100ドル、両面ガラス+ステンレス筐体セットが50ドル、チップ(A12)が25ドル、レンズセットが35ドル、電池が10ドル、その他のコストが160ドルとアナリストは分析している。最も高い部品は有機LEDだが、アップルはLGをサプライヤーとして引き入れようとしており、そのためサムスン電子から値引きを引き出すことができたとみられる。
アップルにとって中国の売上高比率は高くない。2018年4-6月期の売上高では、台湾、香港、マカオなどを含めたグレーターチャイナ全体で18%に過ぎず、アメリカの46%、EUの23%に次ぐ水準である。また、中国でもiPhone Xs Maxの売れ行きは悪くないといった報道もある。
さらに、iPhoneの売上高比率は56%で、前年同期比で20%伸びているが、アプリ販売、音楽配信など、全体の18%を占めるサービスが31%増と急増し、収益構造が売り切りのフローベースのビジネスから、顧客水準に依存するストックベースのビジネスへと変わりつつある。そうした点を割り引いて考慮する必要があるものの、それでも、中国でのiPhone Xsの不振が今後、数字としてはっきりと出てくる段階で、株価は動揺する可能性がありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。有料メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も展開中。