「支出が収入を下回ればお金は貯まる」──そんな当たり前のことは、言われなくてもわかっている。ところが、なかなか貯金額は増えないものだ。福岡県の専業主婦・大森久美さん(仮名)が話す。
「スーパーでの買い物や、子供の塾代の支払いのたびに、夫の給与口座からちょこちょこお金を引き出していますが、いつも月末にはスッカラカン。いつの間にかお金が減っていて、貯金が全くできません」
“貯金するために、すべきことは何か”と聞かれると、まず思い浮かぶのが「家計簿をつけること」だろう。なんとなくお金がなくなっていく状態を解決するためには、家計簿をつけて、毎月、どんな支出があり、どんな無駄な出費をしているのかを把握し、支出をスリムにすることが有効だ。
しかし、子育てなどで忙しくて家計簿をつける時間がなかったり、マメな性格ではないために長続きしなかったり、レシートをもらい忘れて曖昧な記入になったり、家計簿をきちんと細かくつけるのは、かなりハードルが高い。何より、「面倒くさい」と思っている人が大半だろう。
『人生を黒字にするお金の哲学』(WAVE出版)の著者で、これまで家計に関する多くのベストセラー本を生み出してきた、公認会計士の林總さんが話す。
「『家計簿をつけること』と『貯金を増やすこと』はまったくの別物です。家計簿は、無意識に使っている支出を大づかみするためのものとしてはよいですが、過去を記録するだけでは、未来の貯蓄には繋がりません」