【「何もしないこと」こそ最大のリスクである】
「『機会損失のリスク』、つまり“チャンス逃し”に気をつけたい。長期的に見れば資産運用は安定するケースが多く、例えば日本株は1960年から現在まで年率8.4%の成長を続けています。年金だけで生活が成り立たないことを知りながら、『投資しない』のは最大の損失といえるでしょう」
【初期運用の鉄則「資産の10%」と「1年間の肌感覚」】
渋谷氏は、まずは運用可能な資産の10%分から始めることを勧める。
「貯蓄が1000万円なら100万円を運用してみる。大切なのは、5万円ほど損をして落ち込み、10万円ほど得をして喜ぶという体験を1年続けること。失敗と成功を重ねると資産運用の力がつき、『この時期は相場がこうなりやすい』という季節的な要因も学べます」
【分散投資の大原則を再確認する】
運用額が決まったらようやく投資先選びに入る。だが、金融商品は株式、投資信託、債券、さらには預貯金など多岐にわたる。
「私が常に受講者に強調するのは分散投資の大切さです。“投資先の振り分けなんて当たり前”と思われるかもしれませんが、実はポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)の原則を無視していたり、目的を間違えていたりする人は驚くほど多いのです」
老後資産運用は一攫千金を狙う投資ではない。だからこそ相場変動リスクの軽減、つまり“収益のブレ”の最小化が重要となる。
「例えば、原則的に株(日本株)と債券(国債)は逆相関関係にあるので双方に投資すればリスク分散できる。同様に海外株式と海外債券など、ブレを打ち消し合う関係を意識しなければ意味がありません。魅力的だからといって同じ動きの商品ばかりを買うのは分散投資とは呼べませんし、ブレがマイナスに働いた時に貴重な資産を大きく目減りさせてしまいます」
※週刊ポスト2018年10月5日号