安倍政権はすでに年金支給開始年齢の引き上げを決めている。そういわれれば、国民は“そんな話は聞いていない”と驚くだろう。だが、厚労省や財務省は国民に見えにくい形で準備を整えた。
「平成最後の年」となる来年は、5年に1度の年金制度見直し(財政検証)がある。
去る7月30日、財政検証に向け新たな年金制度を議論している社会保障審議会の年金部会に、厚労省年金局が『諸外国の年金制度の動向について』と題する資料を提出した。
その冒頭には、「給付の十分性」と「制度の持続可能性」の矛盾が先進諸国に共通する年金制度の課題だと大きな図で示され、解決策の第1番目に〈支給開始年齢の引き上げ〉が挙げられている。この日の審議では年金局総務課長が資料の内容を説明し、委員たちが「極めて重要な、普遍的な解決策」などと口々に賛同の声をあげた。
関連資料の中には興味深いグラフが添付されている。OECD(経済協力開発機構)が各国の支給開始年齢と平均引退年齢を比較したデータで、それによると、米国は年金(66歳支給)とリタイアがほぼ同じ年齢、ドイツ(65歳支給)やフランス(61.6歳支給)は年金開始より早くリタイアしているのに対し、日本(65歳支給)の平均引退年齢は先進国では飛び抜けて遅い平均70.2歳となっている(いずれも男性)。
“日本は平均引退年齢より5年も早く年金をもらっている”──と印象付ける内容だ。