「平成最後の年」となる来年は、5年に1度の年金制度見直し(財政検証)がある。去る7月30日、財政検証に向け新たな年金制度を議論している社会保障審議会の年金部会に、厚労省年金局が『諸外国の年金制度の動向について』と題する資料を提出した。
その冒頭には、「給付の十分性」と「制度の持続可能性」の矛盾が先進諸国に共通する年金制度の課題だと大きな図で示され、解決策の第1番目に〈支給開始年齢の引き上げ〉が挙げられている。
さらに財務省が財政制度審議会に提出した資料(2018年4月)では、『より望ましい年金制度への改革に向けた視点』として支給開始年齢の「68歳への引き上げ」を例示したうえで、2035年には団塊世代の次に人口が多い団塊ジュニアが65歳になることを指摘し、こう提案している。
〈それまでに支給開始年齢を更に引き上げるべきではないか〉
その先には「70歳支給」が待ち受けている。
政府の年金支給開始年齢の引き上げは、いつも、定年延長に先立って行なわれる。デフレ不況のさなかに決められた前回の65歳への引き上げの際は、60歳定年から支給開始までの「5年間の年金空白」が大混乱を起こした。年金をあてにして長期の住宅ローンを組んでいた人々は、金融機関から「年金がもらえなければ払えないでしょう」と返済期間短縮を迫られ、毎月の返済額がハネ上がってローン地獄に陥る者が続出した。
支給開始年齢の5歳引き上げでサラリーマン1人あたりざっと1000万円の年金を失ったのだから当然の結果だった。