「人生100歳時代」「生涯現役」と、長生きを肯定的にとらえるフレーズが市民権を得るようになってきたが、世の高齢者たちは、心の中では怒っている。経済学者・宮本勝浩氏(73)は最近、こんな“悲しい”経験をしたという。
「レストランで食事をし、レジで1万円札を出したら、おつりが多かった。それで若い店員さんに『間違えてない?』と訊くと、『シニアの方は2割引きです』と平然といわれてしまった。こちらから申告したわけでもないのに、“シニア扱い”されたことにショックを受けましたね」
宮本氏がその店を使うのは初めて。「大人〇〇円、子供××円、シニアは2割引き(証明書を提示してください)」という表示には気づかなかった。
「気を遣ってくれたつもりなのかもしれないが、店員に見た目で判断されるのは、いかがなものか。私はネクタイを締め、ジャケットを着て大学に行き、仕事をしています。すでに隠居生活をしている友人たちに聞くと、わざわざシルバー割引の店を選んで行っているようですが、私は現役バリバリという意識でした。それだけに勝手に割引された時は、“儲かった”というより、若い店員の目には“この人はおじいちゃんなんだ”と映っているんだと悲しかった」
さらに、“追い打ち”をかけるような出来事があったという。大学に通う電車で、たまたまシルバーシートの前に立って本を読んでいると、女子高生が「どうぞ」と席を空けてくれたのである。
「これまで私は、『自分より高齢だな』と思った人や、杖をついている方に席を譲っていたんです。でも、女子高生から見たら、私は席を譲られる年齢に見えるんだなぁと。レストランで感じたのと同じようなショックでした。
もちろんこの女子高生も、シニア割引をしてくれた若い店員さんも、親切でやってくれたのはわかっています。だからこそ、“そういうのはやめてほしい”というお願いもしづらい。でも、勝手に“終わった人”と判断されるのは寂しすぎる。過剰なシニア扱いはやめてほしい。大きなお世話ですよ」
※週刊ポスト2018年10月12・19日号